"DEMENTIA RELATED" MOVIE - TOHOKU INSTITUTE OF TECHNOLOGY UNIV
SENDAI - MIYAGI
その優しさは、誰の為なのか|ドキュメンタリー動画制作を担当
「その優しさは、誰の為なのか - Who is this kindness for.-」これは依頼いただいた動画制作のテーマです。それは1通のメールから始まりました。依頼先は大学の研究室。アルツハイマー(認知症)を研究する研究室からでした。
上記の写真はその当事者で若年性アルツハイマーと共に生きる青年。大学の研究室に当事者としてあるいはアドバイザーとして関わっているという事で、今回の動画制作にインタビューという形でご出演頂きました。
動画制作のシナリオを作るにあたり、ネット上に公開されている彼の動画を拝見しました。どの映像でもまるで当事者とは思えないほど目が輝いています。言葉のメッセージ性が非常に強く、彼の口から出てくる言葉がひしひしと胸に突き刺さってきます。調べると私と同い年。自ら若年性認知症と診断されながら精力的に全国を飛び回っていることも分かりました。
実はこの仕事が正式に決まってから撮影日まで少し期間があったため、彼の著書も2冊熟読しました。自分が認知症と診断された日のこと、葛藤した日々のこと、家族とのこと、仕事場でのこと、そして生きる意志。それらすべてのメッセージがすべての認知症当事者の言葉を代弁し降り注いできます。以下にリンクがあるのでぜひ読んでいただきたい。
インタビュー撮影は当社スタジオにて行いました。撮影時間は1時間程度。撮影当日、セッティングを終え待っていた私の元に彼がスーツケースを抱えてやってきました。この後飛行機で移動するとのこと。挨拶もそこそこにテーブルを囲み、撮影内容と座る位置、目線の向け方なども含め10分ほど雑談をしました。本を読んだ事、同い年だということ、とりとめもない話をしている最中、彼がこう言いました。「すいません、今話してることもお会いした事も忘れてしまうと思います。でもよろしくお願いします。」その言葉が今でも頭に残っています。
この動画にはもうひとつの大きなテーマがあります。当事者の方々が外出先で自分の居場所を忘れてしまうことがよくあるそうです。そんな時、スマートフォンが使えたら。スマートフォンのテレビ電話を通し家族や知人に現在地を知らせる方法がわかっていたらパニックにならずにすみます。その試みを動画に収めることがもうひとつのテーマでした。
撮影場所に選んだのは仙台市内にある福祉施設。この場所を利用している当事者の方々、大学生に協力していただきました。まずは大学生が当事者の方々にスマートフォンの位置情報やテレビ電話の使い方を教える。そこから皆で数キロ離れた公園まで散歩をする。公園に着いたら今どこにいるかをスマートフォンで確認し、テレビ電話で連絡してみる。今自分がいる場所がここだと伝える。そして自分も認識する。動画では研究室の先生方にも登場していただき、認知症についてのインタビューも試みています。
撮影にかけた時間はトータルで二日。トーンを合わせるためカメラはC70を使用。レンズは85mm f1.2をメインで使っています。この動画を制作していく過程で、認知症に対する見方がまるで変わりました。動画制作に関わってくれた様々な人たちの表情や言葉が今でも鮮明な記憶として残っています。
我々クリエイターはものづくりをする側として一瞬しか関われませんが、頂いた仕事を通じて学ぶ事が本当に多いと実感します。対価を頂きながら関わり、知り、考えさせてくれる。ありがたい仕事に就けていると心から思います。
知人が、家族が、自分が認知症当事者になった時、ぜひ下記の著書を読んでほしいと思います。当事者の方がどう考え、どう感じているのか、どうすべきなのか。その答えが彼の言葉からダイレクトに伝わってきます。
参考文献
ディレクション・撮影・編集:KYOSUKEYAMAUCHI
シナリオ:東北工業大学 認知症の人と環境研究所・KYOSUKE YAMAUCHI
KYOSUKE
YAMAUCHI
photographer
movie creator
designer
writer
photographer / movie creator / designer / writer
宮城県生まれ。大学卒業後、都内にて様々なジャンルのカメラマンアシスタントを経て25歳でフォトグラファーとして独立。商品撮影・料理撮影・物撮り・建築撮影・モデル撮影・車撮影に至るまでオールジャンルを撮影ができるのが特徴。現在、仙台に自社スタジオを構え広告・エディトリアル・MOVIE撮影と編集を手掛ける。
web design・graphic design・copy writingにも精通。デザイナー・ライターとしても数々の企業のプロモーションを手がけている。フォトグラファーとデザイナー双方の視点からの制作が得意。写真撮影・動画制作・WEB制作・グラフィックデザインなどクライアントのクリエイティブ周りをすべて担当するスタイルで主に東北を中心に活動している。
株式会社温故見新
代表取締役/撮影用背景ボード Photo background プロデューサー。